研究室配属後に立ちはだかる最初の壁が論文 / 文献紹介ではないでしょうか。
所属研究室に関連する分野の学術論文を読み、研究室のメンバーの前でプレゼンする最初の機会です。
専門用語ですらまだ覚えていない上に全文英語なので、初めて論文を読むときには自分にできるのか不安だと思います。
私自身も初めて論文を読んだときはサッパリ分からなくてパニックになりました。笑
何とか切り抜けられましたが、発表の出来は最悪でした。
本格的に研究生活が始まると嫌でも論文を読む機会は多くなるので、どこに何が書いてあるか大体分かるようになりますが、初めて読むときはどこに注意すればいいのか分からないですよね。
ここでは、初めて論文を読む学生さんを対象に論文紹介で失敗しないために論文を読む際に注意して欲しい点を紹介します。
目次
英語が分からなければ積極的に翻訳を利用する
論文を読む目的は英語の勉強ではないですよね。
もちろん原文のまま理解できれば大幅な時間短縮に繋がりますが、一番大切なのは内容を理解することです。
そのため、どうしても英語が分からなくて全然読み進められないのであれば Google 翻訳や DeepL 翻訳のような翻訳サイトを利用してください。
論文を読み始める前に少しだけ勉強しておくと比較的スムーズに読める
いきなり論文を読み始めても構いませんが、何が書いてあるのかサッパリわからないですよね。
一文一文日本語に丁寧に訳して、専門書で該当箇所を探したりネットで検索して…なんてやってたら全然先に進めませんし、「あれっ、何の話だっけ ?」ってなってしまうと思います。
少し読んだだけでかなり疲れてしまいますよね。
それに、日本語に翻訳するのが目的ではないので、内容をしっかり理解しなければいけません。
内容を理解できていないと意味の分からない不自然な日本語になっていることにも気付けません。
この状態で発表に臨むとかなり高い確率で発表途中でも教員に止められます。
そのため、論文に取り掛かる前に少しでも専門分野に触れておくことを強くお勧めします。
あらかじめ研究背景や専門用語を知っておくと比較的スムーズに読み進められると思います。
レビュー論文で勉強
論文には 原著論文と レビュー論文があります。
レビュー論文は現在明らかになっていることや問題点がまとめられていますし、日本語で記載されている論文もあるので、勉強には丁度いいと思います。
例えば、google scholar で「○○ (専門分野に関連するワード) 課題、レビュー論文」で検索するとそれなりに論文がヒットするはずです。
関連ワードでネット検索
論文検索サイトを使い慣れていない場合、普通のネット検索でも十分勉強できます。
専門分野の関連ワードで検索すると、その分野を研究している研究室の HP や企業の HP がヒットすると思います。
初学者でも理解しやすいように丁寧に説明してくれていますので、是非利用してみて下さい。
各項目では注意して読むポイントがある
論文紹介ではただ読んで発表すればいいわけではないので、
- 何故この研究が必要なのか
- 従来と何が違うのか
- この研究がもたらすメリットは何なのか
を理解して教員や研究室のメンバーの前でプレゼンをしなければいけません。
基本的に発表する論文は自分で探すため、発表者以外はどんな内容の論文なのかわかりません。
そのため、発表者自身が論文の内容をしっかり理解する必要があります。
abstract では内容を確認する
論文紹介は一応勉強会なので、所属研究室の専門分野とかけ離れていないか確認が必要です。
abstract (要旨) では研究背景、実験方法や結論が簡潔に記載されており、論文全体の要約になっています。
本論を読まなくてもどんな内容の論文か分かるので、本論に取り掛かる前に abstract を読んで、この論文を選んでも大丈夫か確認しましょう。
introduction では研究意義を理解する
introduction (序論) では研究意義が記載されています。
- 研究背景
- 明らかにしたい点
- 従来の研究と違う点
- どんな結果が得られたか
- 研究結果が該当分野にどんな貢献を果たしているか
研究背景や従来の研究を紹介しつつ、その問題点やこの研究の独自性、重要性について述べています。
「~だからこの研究が必要なんだ、この研究によってこんなメリットあるんだ !!」と筆者等が主張したい内容が述べられているので、本論に取り掛かる前にしっかり理解しておきましょう。
results では条件や結果の解釈を鵜呑みにせずに考えながら読む
results (実験結果) では以下の流れで記載されていることが多いです。
- 従来の研究で明らかになっていない点
- 実験目的
- 実験方法
- 実験結果
- 得られた結果から分かること
results を読む際には “本当にそうなのか” と本文の内容と実験結果をよく考えながら読み進めて下さい。
(本文中に Figure S1, Table S1 のような表記がされている実験データは supporting information に掲載されています。)
初学者にとっては実験データの評価方法がよく分からないかもしれませんが、正しくデータを評価することはこれから研究活動をしていく上で欠かせないので、専門書等でしっかり勉強しましょう。
discussion では今回の研究結果を踏まえた筆者等の主張を理解する
discussion はただの考察ではなく議論・討論になっており、先行研究と筆者等の見解との合致点、そして今回の結果がより重要であるということを主張しています。
- 得られた実験結果を踏まえ、introduction で言及した研究課題に対する筆者等の見解
- その見解と過去の知見との関連性
- 今回の結果が新たな知見であることの説明
- 新たに生じた課題への言及
discussion は論文の中で最も筆者等の考え・意見が述べられています。
results の時と同様に “本当にそうなのか” “何故そう考えられるのか” を一文一文よく考えながら読み進めて下さい。
conclusion では今後の展望や具体的な応用先を把握する
conclusion (結論) は今回の研究のまとめですが、今後の展望や具体的な応用先についても述べられています。
今回の研究結果が “一体何の役に立つのか” 、 “どんな研究に発展が期待できるのか” といったこの研究がもたらすメリットをよく理解しましょう。
また、今後の方針を述べている筆者もいますが、他の研究者に先を越される可能性も否めないため、新たに生じた課題への改善策や方針を述べていない場合もあります。
資料作成では要点をまとめる
論文が読み終わったら、発表するための資料を作成します。
資料に記載する内容は大体以下の通りだと思います。
- abstract
(著者名、掲載論文誌名、掲載日、ページ数) - introduction
(背景、明らかにしたい点、従来と違う点、本研究によるメリット) - results
(実験データ、結果から分かる点) - discussion
(筆者等の見解) - conclusion
(まとめ、今後の展望、具体的な応用先)
所属研究室所定の形式 (ワード、パワポ…等) があると思いますが、文章が多い資料は非常に見づらいので、要点を簡潔に記載するように心掛けて下さい。
また、配属したばかりの学生さんのために専門用語の説明文があると親切かと思います。
常に何故なのかと考えて調べれば十分な質問対策になる
質問時間ではちゃんと理解できているかが試されます。
論文に書かれていることを鵜呑みにせず、常に何故なのかと考えながら読み進めて下さい。
必要な時には references (参考文献) も読みましょう。
そして、その疑問に答えられるように準備すれば十分な質問対策になります。
質問の中には論文に記載されていないこともあると思いますが、
- 論文に記載が無いから分かりません
- 勉強不足で分かりません
という返答はあまり好ましくありません。
それだと、ただ英文を訳して発表しただけになってしまうので、間違っていてもいいので自分の考えを述べるように心掛けましょう。
最後に
たとえプレゼンが上手くいかなくても全く問題ありません。
一番大切なのは論文の読み方を学ぶことです。
本格的に研究生活が始まるとプレゼンの機会はたくさんあるので、そのときに今回の反省を活かして挑んでください。
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